東電、再び動いた新電力潰し

2014年4月24日 日経ビジネスオンライン

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140423/263368/


次世代電力計のデータ提供に消極姿勢

 スマートメーター(次世代電力計)を巡り、東京電力と新電力(特定規模電気事業者)の対立が再び先鋭化している。東電が新電力に対する電力使用量データの提供を、「1日4回(6時間に1回)」にとどめると主張していることが、本誌の取材で明らかになった。


 スマートメーターはこれまでの機械式に代わる新しい電力計。通信機能を持ち、30分ごとに一般家庭の電力使用量を検針する仕様になっている。東電などがインフラを整備し、2016年に予定される電力小売りの完全自由化後は、新電力が顧客情報を得るための要の機器になる。


 では、メーターで30分おきに検針するデータをなぜ6時間に1回しか提供できないのか。東電の言い分はこうだ。


 東電の販売地域には一般家庭向けの電力計が2700万台あり、合わせると膨大なデータ量となる。これを30分おきに提供するには通信網などへの追加投資が必要なため、今は6時間おきが限界だというのだ。


 だが、資源エネルギー庁電力・ガス事業部で電力市場整備を担当する日高圭悟・課長補佐は「スマートフォンで大量の情報が送受信される時代に30分ごとのデータ送信ができないとは考えにくい」と指摘する。


 新電力のエネットは「30分ごとの使用量データがなければ、発電量と使用量を合致させる『同時同量』の実現が難しくなる」(遠藤久仁・営業本部長)と反発している。


新電力のサービス多様化にも足かせ

 同時同量とは、30分の間に消費者が使う電力量と供給量をプラスマイナス3%の範囲内で合わせること。需要が推定を大きく超えて変動すれば停電のリスクが高まるため、東電などの送電網を借りる新電力に達成が義務付けられている。データが6時間おきにしか得られなくなれば、これは事実上不可能になる。


 それだけではない。スマートメーターのデータを30分ごとに得られれば、日中の使用量が少ないなど、顧客の需要実態に合わせた料金プランの設定に生かせる。一人暮らしの老人宅で、電力使用量の減少から異変を早期発見するビジネスなどにも応用できる。だが、6時間おきになると、新電力が想定する多彩な活用法が限定されてしまう。


 新電力が電力使用量データを取得する方法はほかにもある。一般家庭にHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を設置して、直接情報を取るのだ。しかし、HEMSは実証実験段階で、機器や回線費用などの設置に莫大なコストがかかり、現実的ではない。


 スマートメーターの標準規格が決まった2012年にも、東電は新電力が参入しにくい独自の仕様を主張し消費者や新電力から批判された。


 今回、東電が地域独占の維持へ向けた執念から、再び新電力潰しに動いたとの見方がある。今後の議論の行方次第では、電力小売りの完全自由化による健全な競争は、掛け声だけに終わりかねない。



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