【新電力(PPS)】東北電、顧客流出6割増 新電力乗り換え進む


 電力購入先を東北電力から特定規模電気事業者(新電力)に乗り換えるなどした企業や自治体が2014年度、前年度より6割以上増えたことが分かった。16年4月に予定される一般家庭を含む小売り全面自由化を前に、電力事業者間の顧客争奪戦がますます激しくなりそうだ。


 東北電の14年度の流出件数は前年度比62.6%増の2883件で、自由化対象の顧客全体に占める累計の割合は2.2%から3.6%に増えた。契約電力の累計は35.0%増の計37万8000キロワットだった。


 顧客の流出は、契約電力50キロワット以上の企業などが、電力購入先を自由に選べるようになった05年度から始まった。10年度末に累計1000件を突破。東日本大震災の発生後は沈静化したが、13年9月に実施した電気料金の引き上げ後は、顧客離れが加速した。


 東北電の担当者は「14年度は新電力の発電設備増強や、自治体の電力入札導入の広がりもあり、他の事業者に流れたのではないか」と分析した。


 電力市場全体のうち小売りが自由化されたのは約6割。新電力として多様な業種から約660社が名乗りを上げている。ただ、現状は市場規模が大きい東京や大阪など大都市圏が主戦場だ。東北では新電力の自前の発電設備が少なく、一部大手を除きシェアを伸ばしきれていない実情もある。


 来年4月に一般家庭など小口契約まで市場が開放されると、電力業界は本格的な競争時代を迎える。東北電は本年度供給計画で、10年後の24年度時点で販売電力量全体の2.57%に当たる22億キロワット時の流出を見込んでいる。


 東北電は「安定供給に加え、市場動向を踏まえた新たなサービスや料金メニュー、省エネ相談を通じて顧客に選ばれるよう取り組む」と説明した。