二〇一六年四月に始まる電力小売り自由化を受け、経済産業省が、当初は小売業者が宣伝をする際には禁止する方針だった「環境にやさしい再生可能エネルギー」などのうたい文句の使用を、認める方向で検討に入ったことが分かった。日本弁護士連合会や自民党などから批判が続出したため方針を転換した。
経産省は自由化後に電力小売会社が商品を説明する際のルールを定めた省令案をつくり、一日まで一カ月間パブリックコメント(意見公募)を行った。
省令案には「再生エネによる電力が環境への負荷の低減に資するものである旨を説明してはならない」との条文が設けられていた。再生エネは固定価格買い取り制度で国が導入を支援しているため企業が独自に「環境にやさしい」「グリーン電力」などのうたい文句をつけるのは適切でない、という理屈だった。
これに対し意見公募で異論が相次いだ。日弁連は「再生エネが公的な支援を受けているという明確な説明を義務付ければ解決できる」と指摘。その上で「電力の環境への影響についての情報は消費者の選択において極めて重要」とし、表記を認めるよう要求した。自民党内でも同じ意見が出た。このため経産省は該当する条文を削除する方向で修正を始めた。
一方、省令案には別の問題も残っている。電力会社は商品となる電力に「○%は再生可能エネルギー、○%は火力、○%は原発」といった説明を義務付けず各社の判断に委ねた点だ。欧州諸国は大半が義務化。意見公募でも「消費者の重要な判断材料なので表示を義務付けるべきだ」との異論が相次いだ。自民党でこの問題を話し合ってきた再生可能エネルギー普及拡大委員会事務局長の秋本真利衆院議員も「今の省令案のままでは、原発の電力を大量に仕入れても隠せてしまう」と、見直しを求めている。
経産省は今月中にも省令を固め、詳細な商品説明の方法を定めた指針をつくる方針。(吉田通夫、宮尾幹成)