2015年9月25日 Kabutan
イーレックス Research Memo(3):採算性が高いパーム椰子の殻を主原料とするバイオマス発電所
■イーレックスの特徴及び強み
(1)競争力のあるベースロード電源
イーレックス<9517>の電源調達ルートはJEPXを通じた調達、発電事業者からの買電、及び自社発電の3つである。同社の特徴かつ強みと言えるのが連結子会社イーレックスニューエナジー(株)の土佐発電所である。同発電所はPKS(パーム椰子の殻)を主燃料とするバイオマス発電所で、FIT(Feed-in Tariff、固定価格買取制度)の活用によって、その採算性は石炭火力及びLNG火力などと比較して圧倒的に高い水準である。
土佐発電所は太平洋セメント<5233>の旧土佐工場敷地内に立地しており、太平洋セメントの旧土佐工場のインフラ及び人材(OB社員等)を活用できている点も、同社にとっては大きなメリットであるとみられる。バイオマス発電にはその主原料によって様々なタイプがあるが、同社の土佐発電所はPKSを利用している。PKS利用バイオマスとしては国内初、かつ国内最大の発電量を誇っている。
同社のPKSバイオマス発電例えば太陽光発電と比較してインバランスコストが低いことも大きな優位点だ。電力需要は絶えず変動し、需要のピーク時とボトム時に大きな差が生ずる。この需要変動に対応するために電力供給者は、必要ならば他者(JEPXや他の電力供給業者など)から電力を調達しなければならないが、この費用をインバランスコストという。PKSバイオマス発電は通常の火力発電同様、燃料供給が確保される限り24時間安定した発電量を確保できるため、インバランスコスト低下につながる。
PKSの燃料としての性質及び需給環境も好ましい。重量当たりの熱量が3,500kcal/kgと高いことも発電用原料として有利な点である。需給については、インドネシア及びマレーシアを中心に年間1,000万トン超の供給であるのに対して、需要が年間100万トンと大きな開きがある。PKS発電の拡大に伴い年間300万トン程度に需要が拡大するとの見方があるが、当面は供給が需要を大きく上回る状況が続く見通しである。
(2)機動的な販売戦略
同社の電力の販売先は大きく小売と卸売とに分けられる。小売は最終需要家への直接販売であり、卸売はJEPXへの販売となる。かつては卸売価格が高かったため、卸売電力量が過半を占めていたが、卸売価格の低下に伴い、よりマージンの高い小売電力量を増やしてきている。
販売面での同社の特徴は、小売において代理店制度を活用しているということである。独立系PPSとして同社は、当初から代理店を活用してきたが、2015年7月末現在の代理店数は1,129店に達している。代理店の属性は基本的には電気主任技術者が所属する法人や同資格を有する個人、その他事業会社である。
同社では、顧客および代理店それぞれがメリットを享受出来る代理店制度を構築している事が特徴である。
具体的には、同社は代理店に対して顧客に対する販売価格について裁量を認めている。代理店にとっては顧客への提案内容に自由度が持てる事で成約率の向上に繋がり、成果報酬型の代理店制度において代理店にとってはインセンティブの役割を果たしていると弊社ではみている。
また、顧客にとっても用意されたメニューでは無く、協議を経た価格水準での契約となる事で、納得感を得やすい体制になっているものとみられる。
独立系である同社は、代理店制度を活用して自由度が高い販売戦略を採ることが可能である。その真価は2016年4月からの小口・低圧分野が自由化されてから、より明確になってくると弊社では考えている。需要家の電力使用度合いを表す指標に「負荷率(年間使用電力量÷契約電力÷24時間÷365日)」というものがある。一般家庭など小口・低圧需要家は、一般的に負荷率が低い。負荷率が低い顧客は、相対的に基本料金の占める割合が高く、また、電力会社はそこで使われない電力を他に販売する余裕が生まれるため、電力会社にとってこれらの顧客は収益性の高い顧客ということになる。同社は、1,000を超える代理店網を有し、それらを通じて一般家庭などの小口・低圧需要家顧客の開拓を進め、成長につなげる戦略を採っている。
また、小口・低圧需要の販売価格は大口・高圧需要家よりも割高に設定されている。同社は顧客に占める小口・低圧需要家の割合を高めることで他社と比較して高い平均販売価格を実現していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)